経営メンバーの資質が9割

あるベンチャーキャピタリストに、事業計画書を見るポイントをたずねたところ、以下の5つのポイントを最も重要視していると聞いたことがあります。

  1. ビジネスにつながる技術
  2. 市場の成長性
  3. 創業チームメンバー
  4. 顧客基盤
  5. 実行能力

その中で、「創業チームメンバー」の質の良し悪しが、顧客基盤の構築や実行能力にも多大な影響を与えることから、何よりも重要であることが分かります。現在成功しているDeNAは、操業当初から、カリスマ的な南場氏の周りに優秀な技術者・コンサルタントが集まって結成されたドリームチームで事業を行っていました。設立当初取り組んでいたオークションビジネスでは、目を見張る急拡大まではいきませんでしたが、その後、ゲームビジネスに参入して大成功できたのも、優秀なエンジニアからなるドリームチームがあったからでしょう。アイディアや技術は、短期的にみれば、市場ニーズのタイミングとかみ合わず、短期的には、成功につながらないことはあります。しかし、素晴らしいチームは、どんな苦難があろうとも、新しいアイディアを発想し、事業機会を見つける。そして、現状を変えていき、成功に近づくパワーがありますので、長期的には、会社の成功に欠かせない要素です。投資家は、このようなチームがもつパワーを知っていますので、主要な経営メンバーの経歴やスキルをつぶさに観察します。事業計画書では、経営メンバーの経歴は細かくチェックしますし、実際にピッチの場面で経営者の人間性を観察するのです。

組織・経営陣に記載する内容

事業計画書の組織・経営陣のセクションにおいては、通常、役員の紹介、経営哲学、経歴、人員配置、人件費の見積もりを含めます。
まずは、基本情報を含めることを忘れないようにしましょう。従業員数、役員数、創業者は役員のうち何名かといった情報がまずは必要です。そして、各従業員のやるべきことが明確になっていて、適切な職責を与え、組織として機能しているか確認しましょう。補充が必要なポジションはありませんか?特に、起業後間もない会社は、まだ、計画書を作成している段階ですから、通常は、組織体制は整備できていません。事業計画の中で、目指すべき姿と現状のギャップを記載し、それをどのように解消していくか対処策を述べることが、読み手から信頼を勝ち取るポイントです。

経営チームの魅力を説明する

経営チームを説明するにあたっては、重要な役員メンバーを列挙しましょう。その中には、簡単な経歴を含め、履歴書の要約版として記載し、あわせて、組織における役割についても記載しましょう。役員メンバーの詳細な職務履歴が、事業計画書上説得力を持つのであれば、履歴書を添付資料として事業計画書に含めるとよいでしょう。
経歴を記載するにあたって、注意するポイントは、事業と関連する経歴を強調することです。フレンチレストランを開業するシェフであれば、「2つ星レストランで副料理長を3年、計15年のフランス料理の経験」と記載すれば、独り立ちしても直ぐにやっていける力をもっていると見られるはずです。
また、直接、経営に関わっていないアドバイザーや顧問についても、事業計画書の経営チームに一部として記述することも有用な場合があります。特に、若いメンバーのみで経営を行う場合は、シニアのアドバイザーの存在は、投資家、金融機関に対して、安心感を与えるものです。アドバイザーや顧問の方に了解を得て、事業計画に記載を含めるとよいでしょう。

組織体制について説明する

組織体制は、組織図を見るとよく理解できます。経営コンサルタントは、会社の概要を理解するにあたって、まず、組織図を入念に見るといいます。また、会計士が、会社の監査をする際に、どこに不正の温床がありそうか、探すときにも、組織図をつぶさに観察します。組織図は、それほど会社実態を如実に反映するものですので、事業計画書を見る投資家や銀行も、このセクションへの注目度は高いといえるでしょう。
パワーポイントを使えば、組織図は簡単につくれますので、図表として事業計画書に含めるとよいでしょう。視覚的効果もあるため、効果的です。もし、組織図を掲載できない場合は、文章で、組織ついて記述する必要があります。起業したばかりの会社の場合は、組織図をつくるほど、従業員がいませんので、職務と権限を記載した一覧表をつけるとよいでしょう。
組織図や会社の組織体制を記述する場合は、部署をどのような基準で分け、各役員・従業員にどのような職務を与えているかについて、以下のポイントを抑えて記述するとよいでしょう

  • 組織間のラインは明確な線引きがされているか?
  • 権限が特定の者に集中していないか?
  • 権限を与えずに責任だけ押し付けるような体制になっていないか?
  • 業務量と比較し、人員リソースは十分に足りているか?

リソース不足の有無について記載する。

起業直後の会社に限らず、順調な経営を続けている会社においても、役員クラスの人材不足に頭を悩ましているというのはよく聞く話です。製造業で製造マネジャーが欠員の状況は、何らかの説明が必要でしょうし、IT企業において、CTOが不在であれば、投資家は大きな疑問をいただくことでしょう。ここで、人材不足の問題がないかのように取り繕うことは全くもって得策ではありません。投資家は、経営者は、自社のリソースについて客観的な分析ができないと、ネガティブな印象を持つかもしれません。自社の弱みを認識し、どのように理想とのギャップを埋めていくかを、事業計画書において、主張していくことが重要となります。

人員計画

事業の拡大を見据えているのであれば、人員計画は極めて重要になります。なぜなら、人件費は、経営上主要なコストですし、事業の拡大のボトルネックが人的リソースということはよくある事例だからです。
また、財務数値のセクションで、人件費の見積もりを行いますが、その基礎情報が、人員計画になります。人件費を見積もるために、人員表を作成します。どのポジションが、何人にするか。ポストによって、給料も異なりますので、給料水準ごとに、月次で計画を立てるとよいでしょう。