(1) 起業の恐怖心を「攻めの備え」に変換する

起業される方の多くは、前職で華々しい実績を上げられた営業No.1などの「スーパースター」であるにもかかわらず、実際に起業される際は、不安に苛まれ、夜も眠れぬ日々を過ごすといいます。自信はあるのだけれども、本当に売れるだろうか、お客様は商品・サービスを気に入ってくれるだろうか、資金繰りは大丈夫だろうかといった漠然とした不安がなぜか消えません。『俺ならやれる。俺なら出来る。成功以外に有り得ない』と信じ、腹を括って会社をやめたのに。。。。さらに、起業後少なくとも数ヶ月はまともな収入が無くなる。
それでは、この不安・恐怖を解消し、「夢・アイデア」を実現させるためにはどうすればよいのでしょうか?果たして、「勢いで乗り切る」だけでよいのでしょうか。そもそも、この不安は、起業家クラブに入った者だけが味わうことができる特殊な感情で、起業家の特権です。そして、不安は誰もが感じるものなのです。
不安の原因は、「やっていることが本当に正しいことなのかわからない」という不確実な状況。この不安を克服するためには、まず、やるべきことを明確にすることが重要です。これをやれば、絶対に大丈夫だという自信が持てるレベルまで、徹底的に考え込むことです。そして、それを忘れないように整理し、記録すること。不安な時期は、あれもこれも手を出し、不安を紛らわせますが、これが逆効果。やるべきことを定め、ある分野で一番になるために全力を投入することが不安を一層する最善の方法なのです。

(2) 一番になるためには?

では、起業家にとって、一番重要なことは何でしょうか?それは、ランチェスター経営でいわれるように、「ある分野で一番」になることです。具体的には、1)競合と価格が同水準なら、品質・スピード・味などで他を圧倒する。2)品質などは競合と同水準で価格を圧倒的に安くするというアプローチです。1)、2)どちらの場合においても、創業時に全力を投じ、何かの分野で一番になる土台を作らなければ、その後の成功は危ういものとなってしまいます。もちろん、何かの分野で一番になるためには、創業時から、一転集中で狙いを定め、1つ1つ積み上げていく必要があります。

(3) 羅針盤がなければ海賊王にはなれない

「海賊王になる」と高らかにビジョンを唱えても、優秀な航海士やログのたまった羅針盤がなければ、グランドラインを越え、新世界にすらいけません。これは起業の世界でも同様、まずは、経営者の夢・アイディアを具体的な実行プランに落とした「事業計画書」がなければ、注力する対象もあいまいなままです。起業国家アメリカでは、必ず創業にあたり、マーケティング戦略から収支計画書・資金繰り計画表を含むきっちりとした事業計画書を作成します。これは、銀行融資やベンチャーから資金を調達するために、必須の資料とされているからです。しかし、日本では、これまで、金融機関の審査が甘かったこともあり、起業家に対し、紙ペラ1枚の計画表を要求するのみで、羅針盤になるような事業計画書は作成されることがほとんどありませんでした。

(4) 「事業計画書」を作りいざ船出

事業計画を作成すべき起業家のうち、その多くが、事業計画を作成せず、大きな失敗をしています。事業計画の誤解し、その有用性を十分に理解していないのです。多くの人が、事業計画は、起業、融資、投資のためだけに必要だと思っているようです。そして、多くの人が、事業計画を作成するのは、手間のかかるわずらわしい作業と思っているようです。
事業で成功するためには、単純なことですが、やるべきことをリストアップし、優先順位を付け、人員・予算を適切に配分し、資金繰りを管理することです。もちろん、成功した起業家の中には、事業計画は「絵に書いた餅だ」とか「時間の無駄」と批判する人もいますが、おそらく、そういった方々は、天賦の才能に恵まれ、事前に十分な検討をしていたからうまく経営することができたのでしょう。文章化するかは、それぞれの人にスタイルによりますが、必要な事項をじっくりと考えるプロセスは必ず必要です。事業計画書の枠組みにそって、検討事項をじっくり考えて、行動に移す。このアイディアから実行を繋ぐために、事業計画書を作成することは、決して時間の無駄ではなく、時間に見合う価値のあるものです。