エクゼクティブ・サマリーとは、事業計画書の重要なポイントまとめた要約を指します。目次でみると、このエクゼクティブ・サマリーは、最初ページに位置することになります。事業計画書の最初に配置されるものの、実際に書く場合は、事業計画書のコンテンツが一通り完成してから、最後に要約として書くことが一般的です。この要約は、読み手が最初に目を通す部分であり、残りの部分を読んでもらえるかどうかは、要約の「デキ」にかかっているといってもよいでしょう。その意味でも、ターゲットとなる読み手を意識して、入念にエグゼクティブ・サマリーの構成・内容を考えることが重要となります。

エグゼクティブ・サマリーには何を含めるべきか?

標準的な事業計画書においては、通常、以下の項目を含めます。

  1. 投資家に伝えたいことの要約(1ページ程度のテキスト)
  2. 会社の目的(ゴール)
  3. 会社のビジョン・ミッション
  4. 主要な財務数値予測の要約(グラフ)
  5. 重要成功要因

投資家に伝えたいことの要約

標準的な事業計画書においては、エグゼクティブ・サマリーとして、最初の段落に、投資家に伝えたいことの要約を記載します。この要約には、通常、以下の項目を通常含めます。

  • 会社(事業)の名称
  • 会社の場所
  • 製品・サービスの概要
  • 事業計画書の目的(資金調達をする場合は、希望する条件の概要)

次の段落には、重要なポイントである予測売上高・利益、販売数量、利益率などの財務情報や重要成功要因を含めます。また、投資家に見逃してほしくない情報も絞って記載するとよいでしょう。さらに、今後3年間の売上高・営業利益を含めたグラフをいれるとインパクトのある構成になります。グラフを入れる場合は、文章のほうにおいてもその数字に補足説明を加えるとよいでしょう。

会社のゴールを設定する

事業計画書の冒頭において、会社の目指すべきゴールについて述べる必要があります。これは、投資家や金融機関に、会社の目指すべき方向性の大まかなイメージを伝えるためです。つまり、積極的に投資し規模を拡大していくのか、それとも、こぢんまりと経営し安定した事業を構築しようとしているのか。会社の詳細を語る前に、読み手に、「会社は何を目指しているのか」を簡潔に伝えることが必要になるのです。
ここでいう「ゴール」とは、事業上の「目的」のことを指します。より具体的には、マーケットシェア、売上、利益の目標と考えてください。「目的(ゴール)」を作るにあたっては、「期間」と「数値」を明確にすることがポイントです。つまり、売上高や利益の数値、利益率、成長率、マーケットシェアの数値を挙げるくらい具体的な表現を用いる必要があります。「一番になる」とか「成長率No.1」などはあまりに抽象的すぎるので、目的としては適切ではありません。
事業計画書の目的としてふさわしいのは、例えば、以下のような期間と財務数値が入った目標です。

  • 「最低利益率を25%に維持する」
  • 「3年以内に売上1億円を達成する」

会社にとって、財務的な目標が重要でないのであれば、できる限りその目標に対して、数値をもって測定できる方法を考えてみましょう。例えば、イメージや認知度が重要なのであれば、それらの改善度合いを測定できるような調査方法を検討してみるとよいでしょう。イメージや認知度の向上がマーケットシェアの改善や売上増加につながることもありますので、調査データなどを購入し、マーケットシェアなどを確認することも1つの方法です。満足度という点にこだわるのであれば、アンケート調査を行い、回答数やクレーム数など具体的な目標数値の達成状況をチェックすることも有用です。

ミッション・ビジョンを設定する

ビジネスのコンセプトを固めるためにミッション・ビジョンの言葉をうまく活用するとよいでしょう。「ミッション」と「ビジョン」の言葉の違いは、前者が行動指針であるのに対し、後者が行動の結果を表します。いずれの言葉も、高次元で定められるものですので、事業計画においては、ミッションとビジョンを両者をまとめて、「○○の行動の結果、○○を達成したい」と表現するとよいでしょう。ミッションの作成方法については、こちらを参照。

成功要因を特定する

重要成功要因に注力することは、事業の優先順位を考える上で、適切なアプローチといえます。いかなるビジネスでも、3つか4つほどの重要な要素によって、成否が決まっているといっても過言ではありません。小売業者の間のジョークとして、昔から、成功要因は、「1に立地、2に立地そして最後に立地」と言われるほど、立地の重要性が強調されていました。実際に、マクドナルドの創業者も、「マクドナルドは不動産ビジネスだ」というほど立地がビジネスの肝なのはいうまでもありません。実際のところは、郊外であれば、場所、便利な駐車スペース、低価格の3つといわれています。また、違って例を挙げてみると、一昔前の家電量販店であれば、知識の豊富な販売員、ブランド品の品ぞろえ、新聞折り込み広告が3つの成功要因といわれていました。(インターネットが登場し、現在はこの成功要因も変化しています)

やることを絞って特定の領域に注力することは、ビジネスにおいて最も重要なことです。さらに、重要成功要因というコンセプトは、この「注力」する考えをはっきりしたものにしてくれます。経験則ではありますが、通常、注力する事項が4つを超え、最優先事項が何個もリストに記載されていると、そのどれもが実際に実行されずに終わることが非常に多いような印象を持っています。重要成功要因を考える上では、「注力」という考え方が欠かせないのです。

エグゼクティブ・サマリー作成上のポイント

事業計画書の使用目的によってカスタイマズが必要

内部使用目的の計画であれば、形式ばったエグゼクティブ・サマリーは必要がありません。まずは、事業計画書の目的を明確にしましょう。そのうえで、重要なポイントがカバーされているかを確認し、例えば、会社内の人であれば、会社や製品の概要はすでに熟知しているはずなので、そのような情報は省略して問題ないでしょう。

必要ない情報は極力省く

もし、投資家から資金調達を目的としているのであれば、エグゼクティブ・サマリーで、その旨を記載しましょう。そして、投資家に期待する出資額、持株比率も含めて具体的に提示する必要があります。経営チームの特徴と競合との差別化ポイントも含めると投資家にアピールすることができます。
銀行へのローンを申請する場合も、その旨と具体的な金額を記載しましょう。ローンの条件の詳細は含める必要はありません。

理想的なエグゼクティブ・サマリーのボリュームは?

実務に携わる投資家やアドバイザーの中でも見解が分かれるところではありませんが、通常は、1-2ページが理想的といわれています。近年投資家や銀行は、より簡潔で分かりやすい事業計画書を好む傾向にありますので、1ページ程度の要約でも十分でしょう。重要なことは、強調したいアピールしたいポイントは含めることを忘れずに、読み手の視点に立ち、できるだけ簡潔に表現することです。さらに事業計画を読み進めてもらうために、詳細を説明することなく、エグゼクティブ・サマリーで魅了しなければならないのです。